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カテゴリ:┗ novel - '06( 9 )

また今年もこんなカンジ・・・ロビタ2号の巻

<'06 - novel>

いつも夏休みの宿題をラスト3日で泣きながら仕上げるタイプ。明日の自分を信じて、昨日の自分を恨むことの繰り返し。小学生時代から変わってません。

いつになったら大人になれるのかなぁ。あの頃より「大きい人」にはなったけど。
というわけで、やっぱり今年の研究も最後はばたばたと。



          ・ 『髑髏島の惨劇』   マイケル・スレイド
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初めて読む著者の作品が、まんまその人の印象になってしまいがち。マイケル・スレイドは読んで見て、”魔人”の名に相応しい、と、そう思いました。
第一長編にあたるという『ヘッドハンター』から読みたかったのですが、なかなかマイ鉱山である<BOOK-OFF>で発掘できず。同じく候補に挙げていたこの作品から手に取ったのですが、最初の5ページで「うっ、グロっ!!」と渋い顔になってしまいました。まぁタイトルからしてグロいに決まってるか・・・。

ただ、読んでいるうちに引き込まれてしまう事も確かであり、本格仕立てになってもいるので、万人受けするとは言いがたいものの好きな人は少なくないでしょう。ウチでもとりあえず合格点ではある。

それに巻末に添えられた<著者付記>で、「なお、この物語を生きのびた者たちは、いずれふたたび、読者諸兄と相見えることになるであろう。」という言葉がまた次を読みたい気分にさせるんだよなぁ。

ちなみに、”マイケル・スレイド”というのは、複数作家により構成された合作ペンネームだそうで。それも、参加者が頻繁に入れ替わっていると。なら、作品によって見える顔も違ってくるんでしょうね~。あんまり変わってもヘンだけど。登場人物カブってるわけだし。


          ・ 『フライ・ダディ・フライ』   金城 一紀
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ある平凡な父親が2ヶ月弱の間に経験する物語。

自慢の一人娘が殴られ入院したという知らせを受けた主人公の鈴木一は、殴った相手のボクシング高校生チャンピオンの石原の元に包丁片手に向かうが、誤って手前のオチコボレ学校に乗り込んでしまう。
そしてそこで出会った5人組から、刃物無しでの復讐に向けてケンカのトレーニングを受ける事に。


この人の作品は、自分の中では「めちゃいい!」というものではないんですが、いつでもどれもじんわりと好きです。
今回さらっと読み直したんですが、2回目の方がぐっときました。泣きそうになった。話自体は至極シンプルなんですけどね~、よいです。

ここに出てくる南方たちでもう一遍作ってくれないかなぁ、なんて思ってます。



          ・ 『十二番目の天使』   オグ・マンディーノ
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「泣ける話」を探していた時期がありまして。その頃にリストアップされたものの一つがこの作品。推薦している方が多かったんですよね~。

若き成功者であったが妻子を事故で亡くしてしまい、絶望の底へと突き落とされたジョン・ハーディング。
足も遅く、エラーと空振りを繰り返すが、決してあきらめない小さな少年ティモシー・ノーブル。
ジョンがそのティモシーから勇気と決してあきらめない心を教えてもらいながら、お互い成長していくお話。

作者は”人生哲学書作家”という肩書きらしく、とはいえ、堅苦しいものでは決してなく、エンターテインメントとしても充分成り立っている作品でした。

ウチでの評価としては、「いいお話」というところに止まってしまいましたが。でも、基準点はクリア。
尚、ハードカバーの裏には、野球が詳しくない人のための用語解説まで載ってます。



          ・ 『猿来たりなば』   エリザベス・フェラーズ
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イギリス南部ののどかな自然に囲まれた小さな村、イースト・リート。トビーとジョージは連続誘未遂事件を解決するため、このロンドンから遠く離れた片田舎まではるばるやってきたのだ。だが、そこで二人を待ち受けていたのはなんと、前代未聞の珍事件、チンパンジーの誘殺害事件であった! 英国ミステリ界の重鎮フェラーズの傑作本格。
「春、遠からじ」って、つい言いたくなってしまう、妙に「残る」タイトル考えた人、すごいです。
それにしても、”猿来たりなば”って、ホントにチンパンジーの話だった!すごいこと考えるモンです。ちょっと<バカミス>ちっく。
まぁ、英国ミステリー界の重鎮らしく、なんと長編を71編もしたためているとか。翻訳されているものが少ないため、日本での知名度はめちゃくちゃ高い、ということもないようで。それでも『このミス’99』で4位を獲っているのは流石。
ウチでも、合格点。



・ 『犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎
                    コニー・ウィリス
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SF界で最も有名な文学賞である<ヒューゴー賞>、老舗SF誌の読者投票で選ばれる<ローカス賞>、ドイツのSF賞である<クルト・ラスヴィッツ賞>と総なめってカンジな上に、昨年読んだ『航路』が非常に良かったこともあり、期待たっぷりで入ったのですが・・・。

元々、ユーモア小説『ボートの三人男』っていう作品にオマージュを捧げているってことなんで、その作品を知っているかどうかっていうのも作用しているでしょうし、ウィリス女史の代表作とも言われる『ドゥームズデイ・ブック』の後日談ということもあるので、両作品を知らない自分にはこの作品の旨みを引き立てるスパイス無しで臨んでしまった気がします。
その辺の予備知識があればもっともっと面白く読めたのかなぁ。



          ・ 『ニッポンの犯罪12選』   爆笑問題
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これは爆笑問題が手掛ける<日本史原論シリーズ>第6弾。それまでのものをずっと買ってるわけではなく、たまたま連載されていた≪ダ・ヴィンチ≫を読んで欲しくなったもので。

なので、他のものと比べて面白かったかどうかは分からないんですが、帯で太田氏も言っているように「世に犯罪の種は尽きまじ!」というまんまですね。
「12選」以外にも事件のあらましが載っているんですが、事実は小説より奇なり、というか、摩訶不思議な事件も多いです。

ブラックとは言えジョーク交じりに進んでいくので、そんなに重くならずにいい具合です。



             ・ 『黄金旅風』   飯嶋 和一
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以前読んだ『始祖鳥記』がボクも助手も非常に高評価であったので、今回の作品はリストに載っていなかったにも関わらず「名前買い」をした、ウチでは数少ない作品。

だったのですが・・・やっぱりリストに載ってないのは危険だな。ちょっと自分の中では焦点がぼやけてしまって、あまり登場人物に思い入れられなかった。なかなかその世界にも気持ちが入っていかなかったし。
残念な結果でした。これはさよならだな。



             ・ 『鉄道員』   浅田 次郎
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「この物語を書くために私は作家になった」と言ったという、作者の自信作『蒼穹の昴』が直木賞を落選し、その後この短編集で直木賞を獲られたという、リベンジ作品と言えなくもないですね。
しかもこの短編集のうちのほとんどが、自分にまつわる話であるというのも興味深いです。

実はこれも先の「泣ける話」を探していた時のリストアップ作品であり、多くの人に支持されていたものでした。ただ、解説にもあるように人それぞれ推薦作が異なっている、というのがまた興味が湧いた理由の一つであった気がします。

中でも自分が一番好きだったのは『ラブ・レター』。これは・・・かなり好きな話だなぁ。



             ・ 『動機』   横山 秀夫
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これまた短編集。氏が得意の”捜査以外の部署の譚”で、非常にマニアックなカンジに思えるんですが、これがまた面白いんですよね~。

特に表題作『動機』。この60Pちょっとしかない短い物語には、<横山エッセンス>の全てが垣間見える気がします。
他の3作品もまた違った面を見せる好作です。これは人に薦められるな、うん。



          ・ 『さよなら妖精』   米澤 穂信
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最後は今年の『このミステリーがすごい!』でも2作をランクインさせた、ノっている作家、米澤穂信の一昨年の作品。

異国の地からやってきた、少女マーヤ。彼女と過ごした日々、そして彼女が去ってからの日々が主人公の守屋の心を変えていく。

扱っているテーマは深く、そして重い。それはボクの生涯で一番好きな映画『アンダーグラウンド』と同様のものであり、そこに自分が食付かないはずはないんだけれど・・・。
逆に大好きなものと同じものを追っかけてるだけに、ハードルが高くなってしまったのか、この作品はウチでは何故か受け入れられず・・・。残念ながらこれもさよならとなりました。う~む。
って、わざわざ最後にそういうの持ってくるこたぁなかったかなぁ・・・。


というわけで、ロビタ2号のラボについては、とりあえずこんなところで。

今年の『このミス』、さ~っとみたところでは特に「これ読みたい!」っていうのは無かったし。1位の作品がグロそうで、好みで無さそうっていうのが大きな理由だったり。

なので、後は助手が買ってきて、「(息子を想像してしまって)悲しくて読めない・・・」と言ったまま放ってある、『ナイチンゲールの沈黙』を読んで今年は終了だな、うむ。
『バチスタ』の続編であるだけに、期待は高まるが・・・。『このミス』で上位だったからと言って自分に合わないものも多いっていうのはもちろんあるんだけど、それにしても『ナイチンゲール~』に一票も入っていないってのは気にかかる・・・。

当ラボの研究結果は、ロビタ4号のラボの<'06 - novel>の方にUPしておきます。
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by robita00 | 2006-12-13 22:08 | ┗ novel - '06 | Comments(2)

【本日の研究】 『エンプティー・チェア』

a0035263_15552976.jpg<novel>

本日の研材、

『エンプティー・チェア』   
      ジェフリー・ディーヴァー







生活のリズムが変わり、研究をUPする時間もままならなくなってしまいました・・・。
今現在読み終わっていて未発表のものは8冊。このままでは、今年も「年末にまとめて発表」という事態は避けられない。少しでも発表できるものはしていかないと。

「リンカーン・ライム」シリーズの第3弾である本作。前2作がウチでは高評価であったので、期待大!

2人の女性が誘拐された。容疑者は16歳の少年ギャレット・ハンロン。拉致現場に居合わせた青年を殺して逃走したとみられる。通常「婦女誘拐の場合、発生から24時間が勝負」だ。「それを過ぎると、誘拐犯の目に被害者は物として映るようになり、殺すことに抵抗を感じなくなる」。事件発生からすでに4時間が経過している。少年が逃げ込んだのは広大な森の中の湿地帯。タイムリミットが刻々と迫る。
以上、Amazonのあらすじより。

今回の舞台は、四肢麻痺であるライムが脊髄再生手術のため、サックスとトムと訪れたノースカロライナ州、パケノーク郡。
突然、捜査協力を求められたライムだが、土地勘も無く、機材も充分でない場所で捜査は難航する。何せ相手は、この土地の全てを熟知した”昆虫少年”なのだから。

さらに悪い事に、サックスが”昆虫少年”と行動を共にすることがライムを苦しめる事になる。
そして、その愛するサックスに悪夢が訪れる・・・。


今回、ボクにはちょっとサックスの行動に納得いかない部分があり、展開としてもラストに引っかかる点が・・・。

そういった点ではウチとしては減点対象ではありますが、物語としては悪くなく、いつもどおり熱中して読めました。そこがウチでは肝の部分なので、相変わらず基本点は高いです。合格点ゲット!

『石の猿』『魔術師』、そして先日助手が買って読んでいる『12番目のカード』と、続編もラボにはあるので、今後も1年に1作ずつ楽しんでいきます、はい。

当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<novel - '06>の方にUPしておきます。
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by robita00 | 2006-11-23 17:16 | ┗ novel - '06 | Comments(0)

【本日の研究】 『サイレント・ゲーム』

<novel>

本日の研材、
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『サイレント・ゲーム』   リチャード・ノース・パタースン



前回に引き続き、また<法廷モノ>ではありますが、『弁護士は奇策で~』とはまた一味違った作品です。

辣腕弁護士トニーのもとに、思いがけない仕事が持ち込まれた。依頼人は高校時代の親友で、いまは母校の教頭をしているサム。教え子の女生徒と関係を持ったあげく、殺害の容疑をかけられているのだ。トニーの脳裡によみがえったのは、彼自身が28年前に恋人を殺したとして無実の罪を着せられ、苦悩した悪夢のような日々―過去と現在の殺人事件が絡みあう圧巻の法廷サスペンス。

トニーとサム。そして、スーとアリスン。4人はいつも一緒にいた。
そして、トニーとサムはチームメイトであり、完璧なコンビだった。そして2人の目標は、ハイスクールでの最高の栄誉である<最優秀運動選手>の称号を手にすることだった。

そして、そんな栄光に向かって進んできたトニーに事件が降りかかる。ガールフレンドのアリスンが殺害されてしまったのだ。それもその容疑者として自分が上げられてしまう。

全てを失ってしまい、追われるようにして街を出たトニー。弁護士となり、過去の事件を忘れるために必死でその地位を築き上げてきた。
そして28年が過ぎ、優秀な弁護士となったトニーの元に、スーから連絡が入る。彼の夫となったサムが殺害の容疑をかけられているというのだ。そう、28年前の自分と同じように。


トニーとサムの間に横たわる、友情関係、ライバル関係、恋愛関係。
お互いの信頼や愛憎といった様々な感情が2人を微妙な関係にしていき、そしてまた惹きつけ合わせます。
そういった2人の心理描写や、相手検事ステラ・マーズとの攻防戦、更にはトニー自身未だ悩まされ続ける過去の悪夢とサムへの疑念。そんなこんながうまーく絡み合っていて、非常に魅力的な作品に仕上がってます。

『2004年度版 このミステリーがすごい』の海外編の第4位にランクされている当作品。
まぁ順位なんかどうでもいいんですが、解説を担当されている三橋暁氏の、「ここに年に一冊だけ面白いミステリーを読みたいという読者がいるとする。彼または彼女から、何を読んだらいいかと問われたら、わたしは躊躇なくリチャード・ノース・パタースンをお読みなさい、とすすめるだろう」と書かれている一文にはボクも同感しました。
あまり読者を選ぶというタイプのものではないですし、何よりミステリーとしてはもちろん小説としてきっちり読み応えがありましたから。

作者のものは他にも『罪の段階』、『子供の眼』も≪欲しい本リスト≫にリストアップされているので、引き続き研究していきたいと思います。


当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<novel - '06>の方にUPしておきます。
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by robita00 | 2006-10-19 22:46 | ┗ novel - '06 | Comments(0)

【本日の研究】 『弁護士は奇策で勝負する』

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本日の研材、

『弁護士は奇策で勝負する』   
      デイヴィッド・ローゼンフェルト







またまた忘れないうちに新しく読み終えたものを。
デイヴィッド・ローゼンフェルトのデビュー作で、2003アメリカ探偵作家クラブ最優秀新人賞の最終候補作になった作品です。


父の頼みで死刑囚の冤罪事件に挑む弁護士アンディ。その矢先に父が急死、巨額の預金が発見された。父の過去に何が?二つの難事件を抱えた彼を襲う陥穽、脅迫、銃弾!だがアンディはくじけない。クセ者ぞろいのチームを率い、裁判も巨悪もひっくり返す秘策を探せ!


まぁ題名にあるような「奇策」らしい奇策というのは、最初の方の別の裁判で出てくるくらいなんですが、だからダメだった、ということもなかったです。
何しろ語り口調が面白い、というか、好き。すいすい読めましたし、結構入り込めました。
そして、主人公のキャラがいいなぁ。このテの主人公が好きなんですよね~。

そんなに法廷ものを読んでるわけじゃないんですけど、自分の中では法廷モノって「外れ」が少ない。昔から法廷モノってありますけど、それでもまだまだ出てくるっていうのは、やっぱり実際の「法廷」という場所には物語を超えるようなドラマがあるからなんでしょうね~。

とにかく、当ラボでは合格点を獲得。楽しく読めました。
そして、なんと嬉しい事にこの作品、シリーズ化されているようで、解説によると最低でも2作は続編が読めるらしい。よし、追っていくぞ!って、まぁいつもどおり中古で見かけたら、だけど。


当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<novel - '06>の方にUPしておきます。
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by robita00 | 2006-08-19 21:22 | ┗ novel - '06 | Comments(0)

【本日の研究】 『終末のフール』

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本日の研材、

『終末のフール』   
      伊坂 幸太郎







   世界が終わる前の、叫びとため息。8つの物語。

舞台は、この作者お得意の仙台、そこに建つとあるマンション。
そして、「8年後には小惑星が地球に衝突して世界が終わる」、と発表されて5年が経った頃の設定です。

地球の終わりが残り3年となった時、人は何を想い、そして何をするのか。同じマンションに住む8組の住人たちの物語。当然、各々の物語は微妙に交わるといった連作形式となってます。

会社でイヤなことがあった時読み始めたんですよね~。で、読み始めて3分ほどで、既に気分はほぼすっきりしていた。「世界はあと少しで終わる」。それはこの話の設定のようなものでも、病気でも、事故でも何でもアリなんですが、実際だってそうですよね?いつ死ぬかなんて誰も想像もしてないけど、ほんのちょっと先の話かもしれない。そんな危うく脆いもんです。ホント。

とにかくそう思ったらその時のヤなこと、全部それで許せた。許せたっていうと何か偉そうだけど、何かこう、そんなことはホント些細な事だと思えたんでしょうね。「んなのどうでもいいや」、と。生き死にに比べたら、ほとんどの事がちっぽけだ。


自分も数年前、「ちょっと臓器に瘤ができていて、これが悪いものなのかそうでないものか分からないので、紹介状書きますから大きな病院で診てもらって下さい」って言われた時、それまで「幸せな人生、いつ終わっても悔いないな」って本当に思っていたにも拘らず、かなりのショックを受けたことを思い出します。ちょうどその頃、ウチの坊主もまだ喋れない頃で、「せめて”おとーさん”と呼ばれるまでは生かして欲しい」等と普段しないお祈りまでしたりして。

ボクは「死」というものを思うとき、いつも小学生の時に読んだ『飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ』の事を思い出します。
先日ドラマでもやっていましたが、これは医師の手記を基にした作品で、悪性の腫瘍により、妻や幼い我が子、そして妻のお腹に宿る子を残して、たった32歳で逝かなければならなかった医師の、「苦悩」、というか「悔しさ」がひしひしと伝わるものでした。

その中の一節で、余命が残り少ない事を知らされた日の主人公が、その病院からの帰り道、不思議な事に目に映る一つ一つが輝いて見えたと書かれた部分がありました。何をみても世界を構成する全てのものが輝いて見えた、と。
ボクも、先の話の帰り道、同様に感じられたのを思い出すのです。
そんな時、人は、自分を囲む全てのものが不意に愛おしく感じられるのかもしれない。そして、死に行く自分と反対に、周囲に溢れる生命を感じ、改めてそれらを眩しく感じるものなのかも。

結局、ボクのは何でもなかったんですけどね。だからまた以前のように、些細な事に振り回され、「生きている」ことのありがたみを忘れてしまっているわけですが・・・ダメだなぁ。
いつ死んでも悔いの無いように生きているつもりではあるんですが、実際うろたえるようではそうじゃなかった、ってことですよね?今作の登場人物、キックボクサーである苗場の、

   「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?
    あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」


という言葉をいつも胸にしまっておかないと。


いつものように途中話が逸れましたが、結局この作品はどうだったのかというと、設定はちょうど今の気分に合っていたし、「さすが伊坂!」と思う箇所もありましたが、ウチとしては「ベスト」ではなかったかな?

ただ、この研究発表のためにさらっと再度読んでみたんですが、2回読むと、「あぁ、あれとこれとが繋がってたんだなぁ」、ってさらにわかって2度楽しめるので、その辺は加算点。

忘れないうちに読み終えたばかりの作品の研究を発表しよう、ということで読んだばかりのを先に出したんですが、おかげで既に読み終わった5冊の内容は更に更に忘却の彼方・・・。


当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<novel - '06>の方にUPしておきます。
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by robita00 | 2006-07-30 11:14 | ┗ novel - '06 | Comments(0)

【本日の研究】 『チーム・バチスタの栄光』

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本日の研材、

『チーム・バチスタの栄光』         
         海堂 尊







 ”愚痴外来”こと不定愁訴外来を担当する万年講師である俺、田口公平は月曜日の早朝に病院長に呼び出される事になる。
その用件とは、我が東城大学医学部付属病院の期待のエース、米国帰りの臓器統御外科助教授である桐生恭一に関すること、彼の率いる心臓外科手術チーム、”チーム・バチスタ”の調査依頼であった。
 成功率平均6割という、リスクを伴うバチスタ手術において26連勝を数える奇跡のチーム。だが、ここ最近立て続けに3例失敗しているため調査して欲しいと言うのだ。それも病院の権威に関わる問題なので、周囲には隠密に行うことという枷つきで、だ。更に、外科オンチの自分に与えられた時間はたったの3日。
 失敗はたまたまなのか、それともそうでないのか。もしも術死が故意に引き起こされたのなら、これは「殺人」である。確かに事を大げさにせず調査する必要がある。だが、ここで俺は思う。

   「それって俺がやるべきことなのだろうか?」


第4回目となった、2006年の「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作。

肥大した心臓を切り取り小さく作り直すという左心室縮小形成術、通称”バチスタ手術”。この術式の世界的権威である桐生のチームに何が起こっているのか?
それとも何も起こっていないのか?
医療過誤なのか?
それとも殺人なのか?

各選考委員の間でもかなりの好評価でしたが、読んで思う。

   「この大賞中、過去最高の言葉に偽りなし!」

って言っても、ボクは第1回大賞作『四日間の奇蹟』しか読んだことがなく、第2回大賞作『パーフェクト・プラン』は助手が読んだのみ、第3回大賞作に至っては買ってすらいないのですが。
しかし、とにかくここ数年読んだ中でも上位に位置する作品ではありました。

なんといっても、いつもは長引く最終選考がものの数十秒、史上最短で決まったそうですから。まぁそれには、もう一つのあることの方に議論が向いたということもあるでしょうが。それはまた次の機会に触れるとして。

3部構成となっている本作、第1部では田口の奮闘を描き、そして第2部で、ある男の登場によりまた一段ギアが上がることとなるのですが、それはまぁ気になった方は読んでいただくとして。

<ミステリー>としてのすごさで勝負するタイプではなく、テンポとキャラで勝負するタイプ。そして何よりボクの好きなタイプの”言葉使い”です、この人。それが一番大きいかなぁ。


でも、何にしても読んでから3ヶ月近く経っちゃったら、もう内容忘れちゃうよね。
読んだらすぐに発表していかないとなぁ・・・。


当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<novel - '06>の方にUPしておきます。
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by robita00 | 2006-05-25 21:01 | ┗ novel - '06 | Comments(0)

【本日の研究】 『永遠の出口』

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本日の研材、

『永遠の出口』   
      森 絵都







   私は、<永遠>という響きにめっぽう弱い子供だった。


「あたし今日、友達んちですっごく貴重な切手を見せてもらったの。すっごく高くて、すっごくめずらしいやつ。でも、紀ちゃんはあれを永遠に見ることがないんだね」
「紀ちゃん、昨日、なんであんなに早く寝ちゃったの?『水戸黄門』最高だったのに。昨日は偽者の水戸黄門が登場して、でもほんとにそっくりでびっくりだったのに。紀ちゃんはもう永遠に、死ぬまであのそっくりさんを見れないんだ」
「今日、二組の斉藤くんが昼休みに生徒会の選挙演説に来たんだけど、途中から斉藤君コンサートが始まっちゃって、それがすっごい音痴でおかしいの。もう、みんな大爆笑!あたしあれ、一生、忘れないと思う。紀ちゃんは一生、見れないけど」
 永遠に。
 一生。
 死ぬまで。
 姉の口からそんな言葉が飛び出すたびに、私は歯を食いしばり、取りかえしのつかないロスをしてしまったような焦燥と闘い、でも結局は敗れて、もはや永遠に会うことのないレアもの切手やニセ黄門様や斉藤くんの歌声のために泣いた。全てを見届け大事に記憶して生きていきたいのに、この世界には私の目の届かないものたちが多すぎた。とりこぼした何かを嘆いているうちに、また新しい何かを見逃してしまう。
 裏を返せばそれは、私がそれだけ世界を小さく見積もっていた、ということだろう。
 年を経るにつれ、私はこの世が取り返しのつかないものやこぼれおちたものばかりで溢れている事を知った。自分の目で見、手で触れ、心に残せるものなどごく限られた一部に過ぎないのだ。
 (永遠に~できない)ものの多さに私があきれはて、くたびれて観念し、ついには姉に何を言われても動じなくなったのは、いつの頃だろう。
 いろいろなものをあきらめた末、ようやく辿りついた永遠の出口。
 私は日々の小さな出来事に一喜一憂し、悩んだり迷ったりをくりかえしながら世界の大きさを知って、もしかしたら大人への入り口に通じているかもしれないその出口へと一歩一歩、近づいていった。
 時には一人で。
 時には誰かと。


長々と打ちましたが、この冒頭の部分の文章ですっかり心捕らえられてしまいました。

この後も主人公の紀子の成長を軸に色々な物語が展開されますが、そのどれもが決して大きい出来事ではないものの、自分にも身に覚えのあるような出来事ばかりで、何やら懐かしいというか、甘酸っぱいというか、こっ恥ずかしいというか、そんな気持ちにさせられました。

<女の子>と<男の子>はまた視点も違うんで、考え方の微妙な違いなんかもありましたが、基本的に自分の成長譚を思い返すように読みました。
特に第八章。これは・・・イヤだな、あの頃の自分をみているようで。相手にとってそれが今は笑い話になっていることを祈る・・・。

著者は児童文学をフィールドにしておられるようで、かなり有名な方のようですね~。'03に発表された今作は、「児童文学」という枠を飛び出した最初の作品だったようで。
恥ずかしながらお名前すらも知らなかったボクですが、「じゅわ~っ」分泌量はかなりのものでしたので、当ラボでは今後も追っていきたいと思います。

当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<novel - '06>の方にUPしておきます。
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by robita00 | 2006-04-15 16:05 | ┗ novel - '06 | Comments(2)

【本日の研究】 『GOTH』、『シーラという子』

<novel>

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本日の研材、1つ目。

『GOTH』   
      乙 一







この人の作品は『ZOO』を持っていて、それは特別好きではないけれどラボの書棚に収まっているところを見ると嫌いではないようです。

が、元々はこちら、『GOTH』を読みたかったわけで。ようやく古本で見つけたので即購入、栄えある<2006年、最初の作品>に選ばれました。

で。
既に一月の中くらいには詠み終えていましたので、細かな感想は忘れつつあり。覚えているのは一つだけ。

「・・・ボク向きじゃあ、ない。」

『ZOO』の研究時に、「ホントは『GOTH』を先に読みたかったけど、まぁまずは短編でお手並み拝見!」などと書いたのですが、実はこれも短編でした・・・。まぁ連作ではありますが。

だから向いてない、ということではないのですが・・・。その世界に入り込めなかったわけでもないし、キャラが立ってないわけでもないし。だのになぜか最初の方で既に「ダメ」でした。う~ん、なぜだろう。
あと途中で、自分的にはちょっと許せない描写があって。その辺なのかなぁ。

残念ながら、<本墓場>行きとなってしまいました。


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本日の研材、2つ目。

『シーラという子』~虐待されたある少女の物語~   
      トリイ・L・ヘイデン







泣ける本を探しています。なんだか今ちょっとそんな気分で。
そういった観点からリサーチした結果、ノミネートされた作品がこの『シーラという子』。珍しく色々リサーチしたものなので、期待度はかなり高く。ちょっとマズイ傾向。期待が大きい時はそこそこの作品でも満足できないんだよな・・・。

かなり重度の障害児を抱える教室の教師であるトリイの元に、6歳にして傷害事件を起こして精神病院に送られることになっている子が、病院の空きが出るまでという条件でやってくる。その子の名はシーラ。
彼女は確かに粗暴でちっとも言う事を聞かない問題児ではあったが、実は才能豊かな子であった。劣悪な環境下で育ったために十分な愛情を注がれなかった被害者であったのだ。

というようなお話です。

ノンフィクションであるというこのお話、全米ベストセラーで各国でも翻訳されているようです。アメリカでは20年以上前に、日本でも10年前に世に出たもので、結構前の作品だったんですね。

作者は冒頭で「憐れを誘うために書いたのでもなければ、一人の教師を賞賛するために書いたものでもない」と書いてます。そして、この本は元々出版するつもりは無く、シーラとの思い出が時間の中に埋もれてしまう前になんとか書き残しておきたいという思いから書き始めたそうです。
そういう点からすれば、「思ったほどでもなかった」からダメ、というようなものではありませんね。そんな見方は御門違いというものでしょう。
シーラのその後を書いた続編も出ているようですね。ちょっとその先どうなったか気になるところではありますが。


え?
あぁ、そうですね。当ラボとしては、まぁ、その、つまりは、「残念ながら」ということで。


おっと、今年の<ロビタ2号ラボ>は珍しくイマイチな年になるのか?
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by robita00 | 2006-03-25 07:22 | ┗ novel - '06 | Comments(4)

<novel - '06>

ここでは<novel - '06>の研究を発表しています。
また、みなさんのオススメがありましたら、是非ご一報下さい!

注) これはウチのラボで研究したのが今年ということであり、作品自体の発表が今年のものということではありません。

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 1. ★★★☆ チーム・バチスタの栄光 / 海堂 尊
 2. ★★★   永遠の出口 / 森 絵都
 3. ★★★   ラブ・レター(『鉄道員』) / 浅田 次郎 (12/14)
 4. ★★★   動機(『動機』) / 横山 秀夫 (12/14)
 5. ★★★   サイレント・ゲーム / リチャード・ノース・パタースン
 6. ★★☆   籠城のビール(『終末のフール』) / 伊坂 幸太郎
 7. ★★☆   弁護士は奇策で勝負する / デイヴィッド・ローゼンフェルト
 8. ★★☆   フライ・ダディ・フライ / 金城 一紀 (12/14)
 9. ★★☆   エンプティー・チェア / ジェフリー・ディーヴァー
10. ★★☆   ろくでなしのサンタ(『鉄道員』) / 浅田 次郎 (12/14)
11. ★★☆   鋼鉄のウール(『終末のフール』) / 伊坂 幸太郎
12. ★★☆   逆転の夏(『動機』) / 横山 秀夫 (12/14)
13. ★★    終末のフール(『終末のフール』) / 伊坂 幸太郎
14. ★★    太陽のシール(『終末のフール』) / 伊坂 幸太郎
15. ★★    鉄道員(『鉄道員』) / 浅田 次郎 (12/14)
16. ★★    角筈にて(『鉄道員』) / 浅田 次郎 (12/14)
17. ★★    深海のポール(『終末のフール』) / 伊坂 幸太郎
18. ★★    天体のヨール(『終末のフール』) / 伊坂 幸太郎
19. ★★    演劇のオール(『終末のフール』) / 伊坂 幸太郎
20. ★★    ニッポンの犯罪12選 / 爆笑問題 (12/14)
21. ★★    密室の人(『動機』) / 横山 秀夫 (12/14)
22. ★★    ネタ元(『動機』) / 横山 秀夫 (12/14)
23. ★★    猿来たりなば / エリザベス・フェラーズ (12/14)
24. ★★    12番目の天使 / オグ・マンディーノ (12/14)
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by robita00 | 2006-02-12 12:00 | ┗ novel - '06 | Comments(0)