「ほっ」と。キャンペーン

カテゴリ:┗ novel - '05( 15 )

本日の研究 【ロビタ2号ラボの2005年を振りかえる】

<各ラボの一年間を振り返る>企画第2弾はロビタ2号のラボということで。


元々遅読なことに加え、今年は例年に比べて読書時間自体が減ってしまっていて。満足できるほどの量は読めませんでした。残念。

ただ、去年のようにずば抜けて好きな作品があったわけではありませんでしたが、それでもウチ的に「良かった」と思える数作と出会えて満足度はイイ線行きました。うん。

特に、1作目以上に気に入ってる『コフィン・ダンサー』、昔から大好きだったリリー先生の新たな一面を見せた『東京タワー』、「おぉ、そうきた!」と唸らされた『死神の精度』『荊の城』、瞬間的なパワーはそうでもないものの後からじゅわ~っがじんわりと、そして最後にはひたひたに染み出てくる『航路』『小説ワンダフルライフ』辺りが今年の当ラボ、≪当り作品≫。

伊坂氏は、当ラボ的には「外さない」著者として認知されていますが、今回もその想いを強くさせてくれました。同じように認知されていた横山氏の作品が今回自分的にはイマイチだったのが残念。それでも当ラボの「好き!」ラインはクリアしてますので、次回に期待します。

ジェフリー・ディーヴァーは所長より助手の方が気に入っていて、3作目『エンプティー・チェア』、4作目『石の猿』と立て続けに買ってきては読破(5作目『魔術師』も買ってきているようですが、楽しみに残してあるようです)していたので、ラボの方でも今年には読めそうで楽しみです。

先日『GOTH』、『永遠の出口』、『摩天楼の怪人』と買ってきたので、後はまた例年通り、<BOOK-OFF>か<古本市場>にて1万円分くらいで15冊くらい買ってこれれば今年のラインナップが出揃います。もちろん年内中に面白そうな作品を目にしたらそれも加えるとして。

さぁ、今年はどんな作品と出会えるのか。わくわくしますねぇ ワクo(゚ー゚*o)(o*゚ー゚)oワク
あー、楽しみだぁ。
[PR]

by robita00 | 2006-01-21 21:58 | ┗ novel - '05 | Comments(2)

駆け足で・・・part3

<novel>

そして最後はロビタ2号のラボから。



・ 『神は銃弾』 ボストン・テラン

a0035263_1720061.jpg












ボストン・テランの'00発表の第一長編。CWA新人賞受賞作。

事件はトレーラー内で老婆が殺されているところから始まる。
そして25年を経て、その老婆が面倒を見ていたサイラスという男がある夫婦を惨殺、娘を誘拐する。その娘の元父親である警官ボブは愛する娘ギャビを取り戻すべく独自に捜査を始める。

そこに、今はリハビリテーションセンターで過去のドラッグ中毒から立ち直ろうともがいているケイスが手紙を寄越してきた。以前サイラスらと行動していたケイスは、自分と同じ境遇にある女の子を救うためにボブに力を貸すことに決めたのだ。


所謂"ノワール"ですねー。カルト集団vs警官・ジャンキーという構図です。ボクにはそこかしこに散りばめられたメタファーが過ぎて鼻につくっていう印象なんですが、読んでいる間かなりのめり込んでいたことも事実。面白かったっす。



・ 『航路』   コニー・ウィリス

a0035263_17431372.jpga0035263_17583011.jpg













「臨死体験」とは何なのか?というお話。

読んで「どーん!」というものではないかもしれないけど、読了後「じゅわ~っ」がじわじわと滲み出てくる作品。
「ホント、こういうことなのかもね」、「こうだったら素敵だよなぁ」っていう想いを抱かせてくれました。

訳者の大森望さんも巻末で、「ぼくがこの十数年で訳してきた四十冊近い本の中では、この『航路』がまちがいなくベストワン」とおっしゃられているほど。

ただかなりのボリュームであり、ただでさえ読書時間が削られているためにこれにかなりの日にちを費やしてしまった・・・。まぁ楽しい時間が長く続いたと思えば何でもないことですが。 



・ 『震度0』 横山 秀夫

a0035263_18321929.jpg












N県警本部が舞台。お得意の「捜査官以外を書く」という手法で、今回は県警中枢部にスポットを当ててます。

阪神大震災が起こった朝、県警本部長の椎野の元に警務部長である不破の失踪が伝えられる。只事ではない。普通の警察官が消えたわけではなく、県警の最高幹部の一人が失踪したのだ。まさに県警を揺るがす事件。
キャリアvsノンキャリ、出世争い、各部署各幹部の思惑とプライドが交じり合う中、マスコミへの対応の時間は迫る。果たして不破はどこに、そして何故消えたのか。


横山秀夫という作家はまぁ外さない人ですね。話が「書ける」人です。
これは今まで読んだ作品と比べてしまうと、ウチではちと落ちるんですが、平均点は確実にクリアしてます。



・ 『死神の精度』 伊坂 幸太郎

a0035263_18354537.jpg














死神はいるそうです。そしてとり憑かれると一週間後に死ぬそうです。たいていの場合は。彼らが死を実行することに"可"の判定をすれば。

そんな死神の関わった6つのエピソード。

伊坂作品はどれも大好きですが、「これが必殺の・・・」っていうとこまでの作品は自分的には無くて。今回も同様の印象でしたけど、ラスト、こういうことやられちゃうとボクは弱い・・・。参ってしまいます。それまでそうでもなかったんですけど、「じゅわ~っ」っとね。きてしまいます。こういう「じんわり系」に最近弱いなぁ。



で、最後にこれ。
・ 『容疑者χの献身』 東野 圭吾

a0035263_1913650.jpg












この作家ほど当ラボで当り外れの差が大きい人もおらず、自分的にはなかなか困った人なんですが。
『秘密』などはボクは号泣必至なんですが、あとは好きだったりそうでなかったりってとこで。
なんでいつも手探り状態。「今回はどうなんだろう?」。なのに結構手にしてしまうんですよねー。

今回は『このミス』でダントツだったこともあり、期待も持って臨みました。

結果は・・・悪くないっす。うん。いや、いいと思います。ダントツってことは無いと思うけど、でも・・・今年の作品は例年と比べて不作だった、かな?いや、どれも楽しく読めはしましたけどね。


当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<'05 - novel>の方にUPしておきます。
[PR]

by robita00 | 2005-12-31 01:03 | ┗ novel - '05 | Comments(0)

【本日の研究】 桐野夏生 『柔らかな頬』

「総務・経理」という仕事の関係上、この時期は給与処理と、賞与処理と、月末の締めと、年末調整と・・・といった具合で、ヒジョーに忙しい日々が続いてます。
ま、それも「二日間は会社から離れてゆっくり休みたい!」と思うからこそで、休日出勤すればなんてことはないんでしょうけど・・・。

兎にも角にも、研究は進めど発表の方が遅々として進まず、っていう状態で。この調子じゃあ年の最後に結果だけ羅列ってことになりそうだなぁ。しょうがない、今は出来るものだけ少しづつ。


a0035263_802252.jpg<novel>

本日の研材、

『柔らかな頬』   
      桐野 夏生







『OUT』でブレイクした桐野夏生の'99発表の直木賞受賞作。

物語は、「現代の神隠しか 深まる謎 有香ちゃん失踪事件」という見出しの、新聞記事のようなもので始まります。
森脇道弘・カスミ夫妻の5歳の娘が、遊びに訪れていた夫婦の知人である石山洋平の別荘から忽然と姿を消してしまった・・・
そしてその後はカスミを中心に据えてストーリーは進んでいきます。

生まれ育った北海道の寂れた海岸沿いの飲食店。「この海を見て一生を終えるのなら、死んだほうがましだと子供心にも思った」。
おしゃれをしても誰も気がつかないようなどうしようもなく閉じられた村。そこからの「脱出」を想い、そして家出を決行する。

が、東京に出ても状況は変わらない。
勤め先の小さな製版会社の社長である森脇との結婚は、ただただ生活に疲れ果てた自分を残すのみ。

今では森脇の得意先である石山との逢瀬だけが拠り所。止めては生きていけない。石山と会うことだけが今の自分の「脱出」だから。

そんな時、娘がいなくなるという事件が起こってしまう。

自分が家出したから、自分が親の前から消えて無くなったから、娘も自分の前からいなくなったのか?因果が巡っているのか?それとも「石山といれるのなら子供を捨ててもいい」と一瞬でも思ってしまったからなのか?

数年が経ち、娘を探し出すことだけが生きがいとなるカスミに、余命わずかの元刑事内海が加わって捜索が始まる。
娘はどこかで生きているのか?誰が犯人なのか?何故、娘はいなくなってしまったのか?

様々な人間の視点がからまり、思わせぶりな場面なども盛り込みながら話は進んでいきます。

で、実はこの直木賞を獲ったほどの作品ですが、最後の2行を巡って賛否両論あったようです。言われてみれば確かに気にはなるかなぁ。要らんかったかも。
まぁどんなものにも賛否はありますからねー、人それぞれ違った捉え方をしていいんじゃないでしょうか。
ボクは・・・うん、まずまずでした。ちょっと思わせぶりが過ぎたかなぁ、とは思いますけど。


当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<'05 - novel>の方にUPしておきます。
[PR]

by robita00 | 2005-11-12 08:30 | ┗ novel - '05 | Comments(0)

【本日の研究】 スティーヴン・グリーンリーフ 『匿名原稿』

a0035263_136369.jpg<novel>

本日の研材、

『匿名原稿』   
      スティーヴン・グリーンリーフ






私立探偵ジョン・マーシャル・タナーを主人公に据えたシリーズの7作目。'91発表。

タナーの親友である弱小出版社の社長ブライスの元に、作者不明の原稿が届く。それが紛れもない傑作だと直感したブライスに、この作品を出版する契約の為に、独占出版権を得るために、著者が誰なのかを突き止めて欲しい、そして残りの原稿を手に入れて欲しいと頼まれるタナー。
ブライスに長年の借りがあるタナーは渋々引き受けるが・・・



ここで話の肝となるのは、この作者不明の作品、『ハムラビ法典を讃えて』。所謂”作中作”であるこの話、なかなかよく出来た話で。こういう題材の時はいつも思うんですが、なんかそれだけでもう1作作れそうな・・・。なんて、そんなケチくさいことでは生き延びていけないでしょうけどねー、この世界では。とてつもなく斬新なものを提供しない限り、安直な手法では読者は見向きもしないでしょうから。

この出版社社長のブライスもこう言ってます。

   「物語はそれほど目新しいものじゃない。だって、どうせプロットの種類
   なんて、古今東西せいぜい一ダースほどしかないんだからね。
   どんな物語も、基本的にはすでに存在しているもののヴァリエーション
   にすぎない。」


確かにこういう見方はあるでしょうねー。音楽においてもしばしば用いられる言葉で。
ボクの意見とはまた違うんですけどねー、まぁそれはそれとして。

話を作品に戻して。
手がかりの見つけようのないタナーは、作品を読んで1つのある可能性に思い当たる。
「もしかするとこれは・・・実話なのではないか?」
そしてタナーは少しずつ、この作者の巻き込まれた事件へと引き寄せられていく・・・。

『このミステリーがすごい!』の'94版の海外部門で第3位のこの作品。これで初めてスティーヴン・グリーンリーフという作者との接触を果たしたのですが、うん、悪くはないです、さすがに。
ただ、「そこまでの傑作なのか?」という点で、周りとウチのラボとの温度差が出てしまいました・・・。
それでも合格点はクリア。ランクインは果たしました。


当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<'05 - novel>の方にUPしておきます。
[PR]

by robita00 | 2005-10-09 21:33 | ┗ novel - '05 | Comments(0)

【本日の研究】 奥田 英朗 『 最悪 』

a0035263_22285575.jpg<novel>

本日の研材、

『最悪』   
   
   奥田 英朗






結構前に読み終わったものの、諸事情により発表が遅くなってしまいました。
『空中ブランコ』などでお馴染みの作者による、'99発表の作品。

小さな鉄工所を二人の従業員と細々と営む川谷信次郎、都心から離れた工場地帯の銀行窓口担当の藤崎みどり、定職に就かずただパチンコや盗んだトルエンを換金する毎日の野村和也。

3人に共通するのは、淀んだ空気のようにじんわりとまとわりつく不安感、狭い箱に押込められているような閉鎖感、どうしようもなく身動きの取れない気分の焦燥感。

それでもまだ、この時点ではなんとかやれていた。しかし、ゆっくりと加速していくように3人それぞれをとりまく状況は転がっていく。悪い方へと。
そして、その事態がどうしようもなくなってきた頃、3人は出会う。そしてさらに「最悪」の方向へと引き寄せられていく・・・。

得意先からの無理な注文、町工場から出る作業音に近くに建ったマンションからのクレーム、上ばかり見てる横柄なセクハラ上司、難癖ばかりつけてくる客、父親は措置入院して、母親は別の男と生活を始め、自分はといえば円盤が飛ぶような耳鳴りが続いている・・・。
これで出だし。ここからまだまだ災難は降りかかります。いいことがあれば、その倍は災厄が待っている。

氏の作品は、この後の作品である『邪魔』を読んでいました。そして、ボク的にはそちらの方が「やることなすことうまくいかない」っていうイヤ~なカンジ、やりきれなさが出てた気がします。読んでて胃が重くなりました。
先にそちらを読んでいたのでそこまではいきませんでしたが、今作もウチとしては合格点には達したでしょうかね、うん。


当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<'05 - novel>の方にUPしておきます。
[PR]

by robita00 | 2005-09-23 23:24 | ┗ novel - '05 | Comments(2)

【本日の研究】 リリー・フランキー 『東京タワー』

a0035263_21404057.jpg<novel>

本日の研材、

『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
  リリー・フランキー






先に読んだ、「最悪」「柔らかな頬」「神は銃弾」をすっ飛ばして、敬愛するリリー・フランキー先生の作品を。

リリー先生に出会ったのは、20歳くらいの頃。
当時バイトしていた店で<rockin'on><CROSSBEAT>を購入していて。お客さんがいない時(←ようするにほとんどの時間)の心の友として愛読していたわけです。
そして、作りでは若干劣る(失礼!)<CROSSBEAT>の、「打倒ろきのん!」の為の飛び道具、それがリリー先生だったのでした。

その頃はまだCDレビューは巻末の方にあったんですが、そこのイラストを担当していたのがリリー先生。下品さと、面白さと、可愛さが絶妙にブレンドされたそのイラストを毎月楽しみにしていました。
そのうちそこで、『リリー・フランキーの死亡遊戯』なるコラムが始まり、有害さではアスベスト級、にも関わらずボクの急所を突いてくるその<言葉使い>っぷりで、ボクを更に虜にしてくれました。
この頃から今に至るまで、<CROSSBEAT>に載ったイラストもコラムもほぼ全て切り取って保管してるくらい、大好きなのです。


さて、今回のお話はリリー先生のオカン、ママンキーが主役といっていいでしょう。「死亡遊戯」でも登場したママンキー、そこで紹介された話もちらほら混じっていて、なんだか懐かしく、なんだか嬉しい。

愛すべきオカンと、やりたい放題のオトンと、ダメダメなリリー先生。その3人が辿る、家族の軌跡。くっついたり、離れたり。そして離れてはいても皆繋がっている。「家族」ってなんなんでしょう?
で、リリー先生もいいけど、オカンがいい!オトンは・・・すごい人。
数々のエピソードが語られ、その都度「親はやっぱり親なんだなぁ・・・」って実感。おれは・・・なれるのか?ホントに?


   大きくて、柔らかくて、あたたかだったものが、ちっちゃく、かさついて、ひんやり映る
   ときがくる。
   それは、母親が老いたからでも、子供が成長したからでもない。
   きっとそれは、子供のために愛情を吐き出しつづけて風船のようにしぼんでしまった
   女の人の姿なのだ。



そう。きっとそう。
今のヨメさんみてると、ホントそう思う。全ての愛情を注ぎ込む姿。子供は母親孝行をしなきゃウソ、だよね。
そんな自分が一番してないんだけど・・・。

そして、こう続く。


   どれだけ親孝行をしてあげたとしても、いずれ、きっと後悔するでしょう。
   あぁ、あれも、これも、してあげればよかったと。



・・・間違い無い。それでもね、今からでもしなきゃなぁ、ホント。
ありがたい気持ちと、うざったい気持ちと、渾然一体となったのが母親への気持ち。
ただ、自分が死ぬときに心の底から「ありがとう」と言える、世界に三人しかいない内の一人であることは間違い無い。

この作品を読んで、久々に「声が聞きたいなぁ」、と思いました。


先生の作品では、やはり「死亡遊戯」、そして「日本のみなさんさようなら」がボクの中では双璧なんですが、今回の作品、今までとは毛色が違えどもやっぱりいいです。
前述した2作ほどの攻撃力は無いですが、初めて読む方にはいい按配なのではないでしょうか。


当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<'05 - novel>の方にUPしておきます。
[PR]

by robita00 | 2005-08-29 22:44 | ┗ novel - '05 | Comments(4)

【本日の研究】 是枝 裕和 『小説ワンダフルライフ』

a0035263_0205011.jpg<novel>

本日の研材、

『小説ワンダフルライフ』
  是枝 裕和








『小説ワンダフルライフ』は同名の映画が基になってはいますが、単に映像を文字に置きかえたものではありません。脚本に肉付けをし、ふくらませたものでもありません。今回僕がやりたかったのは、映像を活字に定着させるのではなく、映画という形でいったんふくらんだ『ワンダフルライフ』のモチーフを、活字というフィールドへさらに解放していくことでした。ですから読者のみなさんには、この小説をそれ自体独立した作品として読んでいただければ幸いです。
以上、巻末にある作者によるあとがきの一文を抜粋させてもらいました。

この言葉から分かる通り、まず映画が先にある作品であり、それを映画監督が自ら小説化したもので。ボクは映画を見ていないので、先入観無しで自然と入ることができました。

人は亡くなると、天国の入口でこう言われます。「あなたの人生の中から大切な思い出をひとつだけ選んで下さい」天国に行くまでの7日間で、死者たちは人生最良の思い出を選択するように迫られ、それを職員が再現して映画に撮影し、最終日には上映会が開かれるのである。そこで死者たちは改めて自分の一生を振り返る。懐しさにひたり、後悔したり、思い悩んだ末に彼らが選んだ思い出は…
というのが、あらすじです。

「あちらの世界」と「こちらの世界」とを繋ぐ空間。そこでの一週間を描いた物語。

主人公が誰、ということのないお話。そこを訪れる死者たちも、そこで思い出を選ぶ手伝いをする職員たちも。

さまざまな思い出を抱えています、誰もが。そして皆それぞれ「これ」という瞬間があるわけですが、なかなか選びきれない人もいます。中には納得できず、選ぶことすら拒否しようとする者もいたりして。

そしてその中に、「何か”生きた証”がわかるような出来事を選びたい」と言って、なかなか選べない人がいて。
職員の一人、杉江はこう言います。

  「”生きた証”っていってもねぇ。普通さ、ほとんどの人はそんなもの残せないんだから。
  ここに来てから”生きた証”なんて探しても遅いよ」

そうかもしれません。

それとは別にボクは思う。そもそも”生きた証”なんかいらん!、と。ボクがここにこうして”生きている”ことだけで十分。自分の人生、目一杯生きて、生きて、その事に自分で満足いけばそれでよし!
・・・なんて。何一つ成し遂げていない人間の負け惜しみかなぁ。
それに、「目一杯」といっても、一生懸命何かをしているわけではなく、ただ単に「少しでも幸せに楽しく暮らせるように頑張ってる」だけの話ではありますが。

でも、4歳で亡くなった姉を含め、思うように生きれなかった人たちも沢山いるわけで。生きさせてもらっている自分が、自分自身で満足出来るようにしようという気がないと、そういった人たちにも失礼な気がする。だからボクは、日々「楽しくやれるよう」に頑張るのだ!おー!
・・・お、微妙に話がズレてるぞ。

ズレついでに。
このお話の設定とは異なりますけど、もし「思い出の中から一つだけ戻っていい」って言われたら、この瞬間って決めてるのがあります。っていうか、10分でいいからその時間のその場所に戻って、そこにいる自分に言ってみたい言葉があって。
「お前がさ、今思ってること。そのこと、将来実現すっからさ」。どんな顔することやら・・・。


当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<'05 - novel>の方にUPしておきます。
[PR]

by robita00 | 2005-07-25 22:45 | ┗ novel - '05 | Comments(0)

【本日の研究】 浅田次郎 『壬生義士伝』

a0035263_23484625.jpga0035263_2349658.jpg<novel>

本日の研材、

『壬生義士伝』
  浅田次郎







小雪舞う一月の夜更け、大坂・南部藩蔵屋敷に、満身創痍の侍がたどり着いた。貧しさから南部藩を脱藩し、壬生浪と呼ばれた新選組に入隊した吉村貫一郎であった。“人斬り貫一”と恐れられ、妻子への仕送りのため守銭奴と蔑まれても、飢えた者には握り飯を施す男。元新選組隊士や教え子が語る非業の隊士の生涯。浅田文学の金字塔。

五稜郭に霧がたちこめる晩、若侍は参陣した。あってはならない“まさか”が起こった―義士・吉村の一生と、命に替えても守りたかった子供たちの物語が、関係者の“語り”で紡ぎだされる。吉村の真摯な一生に関わった人々の人生が見事に結実する壮大なクライマックス。第13回柴田錬三郎賞受賞の傑作長篇小説。

以上、本作の上・下巻の巻末にあるあらすじでした。

この南部藩の蔵屋敷にやってきた吉村貫一郎は、”脱藩”という、当時大罪である所業をしておきながら、敗け戦になったとみるや帰参を願い出たということで、その図々しさに周囲の怒りを買うことに。そしてその場で切腹を言い渡されるが・・・

その吉村の回想シーンと、吉村の周りの人間が後に語る”吉村像”とを交互に織り込む形式で話しが進んで行きます。

歴史に非常に疎いワタクシ。「吉村貫一郎」なる人物は、この物語の為に存在する”架空の人物”と勝手に思いこんでおりましたが、実在したのですね。ま、華やかに語られる新選組の中にあって、かなり無名の存在だったようですが。
ちなみに、新撰組は壬生寺の境内で兵法の訓練を行ったりしていたこともあり、人々は彼等を”壬生浪”と呼んだそうです。壬生の浪人っつーことで。タイトルはこの呼び名からきてるんですね。

最初、「脱藩したけどやっぱり戻りたい」っていうその図々しさに、あまりいい感情を持てずにいて。徐々にその理由も含め納得していくんですけどね~。

「禄を失い、矜りを失い、死場所を得ずに生き永らえてしまった武士たちに残された言葉」が、”おもさげなござんす”、要するに「申し訳ない」だなんて、どんな時代だったのでしょう。今の時代にそれを推し量ることは難しい。でもたった150年くらい前の話しなんですよね。
しかしそんな、「戦にて死ぬことこそがあっぱれ武士の誉れ」などという時代に、「生きることこそが武士じゃと、生きて忠孝のかぎりば尽くし、畳の上に死するが武士の誉れ」だと思っていた吉村貫一郎。
「ただ生きんがために、国ば捨て申した」。これが全てなんだよなぁ。それも自分が、ではなく、自分が守るべきものの為だけに。

全ての人間が、その出自によって決められてしまう世の中。そんな中、自分の生き方を貫いた吉村。その吉村に切腹を命じた大野次郎右衛門に仕えていた、佐助のこの言葉が、やっぱり男として「ずしっ」と心に響きます。

   男なら男らしく生きなせえよ。潔く死ぬんじゃあねぇ、潔く生きるんだ。潔く生きるてえ
   のは、てめの分を全うするってこってす。てめえが今やらにゃならねえこと、てめえが
   やらにゃ誰もやらねえ、てめえにしかできねえことを、きっちりとやりとげなせえ。   
   そうすりゃ誰だって、立派な男になれる。


本作は映画化されているんですが、先に映像化した10時間にも及ぶTVドラマでも割愛する部分があった、というほどの大作。しかし、映画化に際して浅田氏は、「これは映像と活字の情報量の違いなのでしょうがない。あらためて文章表現における情報伝達の力を思い知ったとともに、制約された中でよくまとめてくださったと思う」と語ったそうです。原作も読んで、映画も観たという方の中にも「やっぱり泣けた」という声が聞かれたので、うまくまとめられたのでしょう。
映画での主役は中井貴一さん。「どこを切っても真面目印」なイメージがあるので、適役と言えるでしょう。浅田氏のいうように、吉村を演じるには少々清らかに過ぎるきらいはあるものの。

全くの余談ですが、新撰組についてすらすごく基本的な知識しかないワタクシにとって、ここで書かれている沖田総司って自分のイメージとかなり違いましたねー。
「・・・案外、ヤな奴?」


当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<'05 - novel>の方にUPしておきます。
[PR]

by robita00 | 2005-05-08 22:00 | ┗ novel - '05 | Comments(4)

【本日の研究】 伊坂幸太郎 『グラスホッパー』

a0035263_1252928.jpg<novel>

本日の研材、

・『グラスホッパー』
    伊坂幸太郎






【鈴木】
元教師。教師を辞め、表向きは女性を勧誘し化粧品や健康飲料を勧める会社、だが実際は常用生の高い薬物を売りつけ、人攫いもするという怪しい会社で契約社員として働く。
何故なら、そこのどら息子が自分の妻を轢き殺した犯人であるから。

復讐を胸に抱き会社に潜入するものの、あっさり疑われる鈴木。そしてその疑惑を払拭する為、攫ってきた若者を殺すよう命じられる。
が、そんな時、そのどら息子が目の前で轢かれてしまう。そして鈴木は見る。現場から人影が立ち去って行くのを。そして命じられるままにその影を追う。

【鯨】
自殺をさせる専門の男。鯨を前にすると皆、絶望的な気持ちになり、生きていることが苦痛に感じられる、そんな能力を持つ。

あるホテルに男を自殺させる為にやってきていた時、彼も鈴木と同じように事故を目撃し、現場を離れる怪しい影に目を止める。そしてその存在には聞き覚えがあった。『押し屋』。ターゲットの背中を「押し」、事故に見せかけて葬る。そしてその存在は、鯨に常に付きまとう苦い思い出を呼び覚ますものであった。

【蝉】
殺し屋。依頼があれば誰でも殺す茶髪の若者。マンションの一室で営業、調査を担当する岩西という上司と、二人でこの稼業を続けている。

ある依頼先で仕事終りに何気なく観た、ガブリエル・カッソの『抑圧』。その主人公の青年に自分を重ね合わせ、人形であるかのような自分に不快感を感じ始める蝉。


3人の視点で進められて行く形式。そしてその後、3人の進む道は交差していきます。

復讐を誓うものの、気の弱さが常に前面に出てしまう鈴木、自分が自殺させた人間達が亡霊となってまとわりつき、時に現実との境までわからなくなってしまう鯨、命令を受けて人を殺しているうちに、自分が操り人形のように思えて自由を求める蝉。

「いつもの僕の小説に比べると物騒な感じのお話になりました」と著者も述べているように、今までとは少し違った風合いの作品になりましたかね?

蝉に命令をする上司、岩西。彼はジャック・クリスピンなる人を敬愛しており、何かにつけ彼の言葉を引用する。
が、この”ジャック・クリスピン”なる人物も、上で書いた”ガブリエル・カッソ『抑圧』”も、どうやら・・・のようで。伊坂氏らしい、ひねくれっぷりですなぁ、全く。
鯨の肌身離さず、繰り返し読む本、『罪と罰』。それを逆さから読むと『唾と蜜』になる、そんな着眼点もらしくていいです。

なかなかね、今回も伏線が効いてていいです。うっかり見過ごしてたもの達が集束していく様は何とも言えず爽快な気持ちにさせてくれますね。

「バカジャナイノー」。←これ、最後まで心に残りました。


当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<'05 - novel>の方にUPしておきます。
[PR]

by robita00 | 2005-04-24 14:19 | ┗ novel - '05 | Comments(0)

本日の研究 【バッテリー】

a0035263_21414268.jpg<novel>


本日の研材、

・『バッテリー』
    あさのあつこ





「そうだ、本気になれよ。本気で向かってこい。―関係ないこと全部捨てて、おれの球だけを見ろよ」
中学入学を目前に控えた春休み、岡山県境の地方都市、新田に引っ越してきた原田巧。天才ピッチャーとしての才能に絶大な自信を持ち、それゆえ時に冷酷なまでに他者を切り捨てる巧の前に、同級生の永倉豪が現れ、彼とバッテリーを組むことを熱望する。巧に対し、豪はミットを構え本気の野球を申し出るが―。
『これは本当に児童書なのか!?』ジャンルを越え、大人も子どもも夢中にさせたあの話題作が、ついに待望の文庫化。

以上、本作巻末の作品紹介からでした。

確かに本屋に行くとよく見かけました。でも全然手に取る気にならなかったのは…恥ずかしながら完全に「タレント本」だと思っていたわけで。「それにしちゃあ売れてるなぁ。」…って、そんなワケないだろっ!ボクが思っていた女優さんとはまるで別人だったのでした。

主人公は天才ピッチャーの原田巧。よくある、最初は拙いが最後にはすごいピッチャーになる、という話ではなく、端っからすごいピッチャーとして登場します。

「誰にも頼らない、信じるものは自分だけ」という思いでずっとやってきた野球。自分に厳しく、そして他人に厳しい。それは自分の親に対しても同じで、弟ばかり守っている母や、自分のポジションさえ知らない父を思うと、どうにも歯痒さを感じてしまう。

   「大人ってさ、知りたいことは何も教えてくれないくせに、何で関係ないことばっか、
    しゃべるのかなって思ってさ。」

そんな巧たち親子が、以前高校野球の監督をしていた祖父の元に引越しをしてきたその地で、巧は永倉という同い年の子と出会う。
そして、永倉や弟の青波らによって、巧の心にも少しづつ変化が…。

野手における天才は9人の中の1人でしかないが、野手全員が相対さなければならない投手における天才というのは、もう別格なわけで。まさに孤高の存在。唯我独尊。

作者もあとがきで、個よりも集団をはるかに重視する、今のこの国や学校といった場に巧を放り込んで、周りと同調し変化して生き延びるのなんかではなく、周りに抗いながらも枠を突き破る存在というものを彼に託した、と述べています。そういった「何にも負けない、強い意思、強い存在」を今、この世に問うた、と。

それでも、きっと自分だけでは無し得ないであろう高みに達する為に、その純粋な思いの為だけに、巧と永倉とはバッテリーを組む。

   「いいさ、時間はたっぷりある。これからバッテリーを組んでいくなら、時間はたっぷり
    あるはずだ」

そう、これからどれだけシリーズが続いているのか知りませんが、これから時間をかけて≪バッテリー≫になっていくのでしょう。今はまだ巧は1人だと思っているけれど。


著者はこの作品で<野間児童文学賞>を、次の『バッテリーⅡ』で<日本児童文学者協会賞>をそれぞれ受賞しています。
ただ、各方面の方がおっしゃられているように、これは大人の方でも十分読むことの出来るものですねー。

この作品は、「本の雑誌」の増刊として発売されている≪おすすめ文庫王国 2004年度版≫の1位に選ばれていまして。
で、ウチ的にはどうだったかというと、どうも続編ありきで読んでしまった為か、この後どうなっていくのかという事の方が気になってしまって…。

作者の言わんとするところは、全てこの作品に入っていると思いますが、物語の楽しみとしてはこの続きの作品の方が上っぽい気がしましたね、うん。

当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<'05 - novel>の方にUPしておきます。
[PR]

by robita00 | 2005-03-20 22:59 | ┗ novel - '05 | Comments(0)