本日の研究#1 【ポップ1280】

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本日の研材。

『ポップ1280』 ジム・トンプスン 著。



パルプ・ノワール史に屹立する弧峰
ポッツヴィル、人口(ポップ)1280。保安官ニック・コーリーは、心配事が多すぎて、食事も睡眠も満足に取れない。考えに考えた結果、自分にはどうすればいいか皆目見当がつかない、という結論を得た。口うるさい妻、うすばかのその弟、秘密の愛人、昔の婚約者、保安官選挙……だが目下の問題は、町の売春宿の悪党どもだ。何か思い切った手を打って、今の地位を安泰なものにしなければならない。なにしろ彼には、保安官と言う仕事しか出来ないのだから……
アメリカ南部の小さな町に爆発する、殺人と巧緻な罠の圧倒的ドラマ!キューブリックが、S・キングが敬愛するジム・トンプスンの代表作。饒舌な文体が暴走する、暗黒小説の伝説的作品、登場!

というのが、巻末にある本作品の紹介文です。

本作品は1964年に刊行されたものなんですが、なんていうんでしょう、文体に古臭さは微塵も感じません。まぁそれは訳者の方の技量もかなりあるのでしょうが。翻訳物は訳者によって印象が全然違ったりするので。

それにしても…わるいやっちゃなぁ、こいつは。
人口たった1280人の町の保安官が主人公。なんだか牧歌的な雰囲気も漂いますが、とんでもないです。
”悪い奴”が出てくる話はそれこそ山ほどありますが、”悪い奴”の一人称で語られる話、多分初めて読みました。その視点で話が進むので、自分の中の”暗部”へと触れて行くような感覚を覚えますねー。引き込まれるんだけど、なんだかヤーなカンジ…。

また、やること成すこと思い通りに行くんだなー、これが。自分がどう思われてるか、そしてそれをどう利用すれば自分の思う方向に持って行けるのか。どうして自分がそうするのかはわかっていないようですが、それがどういう結果に繋がるかははっきりと認識してやってますな。

とはいえ、ボクもそういう人間でないとも言いきれませんが。何といっても”暗黒”の部分にはなんだか惹かれるものがありますもんね。まぁあくまでも読み物としては、ですが。
本作は「勧善懲悪」という、当たり前の図式に当てはまらないだけに、好き嫌いは別れる所かもしれませんが、ボクは結構気に入りました。

それにただただ悪い奴の活躍譚、というわけでもなく聖書からの引用などもあるようで、そう言った面での見所もあります。


伝説のカルト作家と呼ばれ、死後10年以上を経た後初めて評価されて名声を得るに至った幻の作家、ジム・トンプスン。彼の作品は本国アメリカでは10年、長いものでは30年も手には入らなかったらしいです。ただしフランスでは大変人気があったようで、”ロマン・ノワール”(”ノワール”はフランス語で”黒”という意味で、”暗黒小説”などを指す)の代表格として支持されていたんですねー。

その素晴らしさは本国でも、クエンティン・タランティーノ、ジェイムズ・エルロイ、スティーヴン・キング等、錚々たるメンツが支持を表明しており、キングに至っては、「トンプスンは私の大好きな犯罪小説家。真似るものはたくさんいるが、ひとりとして同じ者はいない」と語るほど。

亡くなる直前、奥さんに、「ちょっと待っていろ。死んだあと10年したらおれは有名になっている」と語ったということですが、評価されず不遇の時代を過ごしていても、「おれのやってきたことは間違いない!」という確固たる信念を持っていたんですねー。

「トンプスンさん、あなたのいうとおり、10年以上経って世界はやっとあなたに追いつきましたよー!」



当ラボの研究結果は、ロビタ2号のラボの<'04 - novel>の方にUPしておきます。
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by robita00 | 2004-10-04 15:25 | ┗ novel - '04 | Comments(0)